連続するか分からない小説「はまぐり」第二話
【第二話】
「それ、刺身で食えるか?」
運転手さんいわく、
外から桑名にきてハマグリを食べようとする人はそういうことを聞かないので、
新鮮なハマグリを提供していないお店の人はどうやら、しどろもどろになるらしいのだ。
でも、
そもそも私達にはハマグリを刺身で食べるアイデアがなかったので
びっくりだよね。
更に、地元の人が最も好むハマグリの食べ方は、焼き、酒蒸し、刺身、しぐれ・・・
ではなく、なんと、天ぷら。
夫は、
「えっ殻ごと揚げるんですか?」と聞いてしまうほど、ハマグリの天ぷらを想像する事ができなかった。
そんな話をしがてら、
私達の頭の片隅には、不動産屋からの帰り方はどうしようかな、という考えがちらつき始めていた。
駅も遠そうだし、車もビュンビュン走ってて、歩きも怖いな・・・
私達の不安な表情を読み取ってか、運転手さんはこんな提案をしてくれた。
「10分くらいだったら、サービスでメーターあげずにそこの前で待っててあげるよ」
って、なんてあたたかいんでしょう。
その日の気候もあってか、汗が止まらないくらいあたたかい言葉だった。
忙しくて迎えにきてくれない不動産屋さんとは対照的である。
10分ほどで部屋の鍵を受け取り、待っててくれたタクシーに乗り込んで、
また楽しくお話をしながら、いよいよ新居の前に到着。
「どうもありがとうございました!」
最後に清算。
【乗車料金¥4510】
えっ意外と高額!
つづく・・・
これは、印刷会社で働いている東京生まれ東京育ちの夫婦が、
とあるプロジェクトをきっかけに、
三重県桑名市で奮闘する、多分ハートフルなお話です。