第六回 ターポリンのような人?
カリフォルニア旅行中に
バーで楽しくテキーラショット…
どれくらいの時が過ぎたのだろうか。
朦朧とした中、そこには何もない、
砂漠を味方につけることでしか、
私の長年のバディー(iPhone )がポケットの中にちゃんといることを確認した。
寂しさを紛らわすために普段はあまり使わないSiri に話し相手になってもらおう。
「モーテルへの帰り方教えて」
「ゴフンゴニトラックガクルカラノセテモラエ」
なんでタメ口なんだ?そんな設定した覚えがない。
すると、遠くからトラックが本当に来た。
ドライバーさんはいい人だといいな。
あれ?ドライバーさん何処?
え?無人?自動運転?ゴースト?
「イイカラトラックノレ」
Siriの声がトラックの中から聴こえてきた。
私は只々指示に従うままトラックに乗る。
運転席にはやっぱり誰も乗っていなかった。
「シートベルトシトケヨ」
ちゃんと交通ルールを理解しているようで良かった、
ロードムービーで観たあの何もない、一直線に伸びた道路。
だんだんと景色に建物の輪郭が現れ、しばらくしてトラックはあるファーストフード店に入っていった。
「ハラヘッテルダロ」
そういえば、昨日の夜からちゃんとした食事をしていない。
「
え…?
わたし、小腹がすいているって、さっき伝えた筈だよね…
有無を言わさずトラックは受け取り口まで進み、
「オレノオゴリダ」
これを食べなかったらどうなるのか…?
というか結局わたしの口座から引き落とされるよね?
「オレノブンマデクッテクレヨナ」
なんとなく感じるプレッシャーに、
「イイクイップリダ」
お残しは許されない…。
「アンガイタフダナ」
なんとか、本当になんとか食べ切れた私は、
トラックはまた道なりを走り続けた。
「ク〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
J・カビラか?
Siriが突然奇声を発した。
「オレコンドルトハナシデキルンダゼ」
え、自慢?
なんて思っていたら、窓をコンコン、
コンドルだ。
「ク〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
「クク、ク〜〜〜〜〜〜」
J・カビラとJ・カビラが会話してるみたい。
私も混じりたくて、真似をしてみた。
「く〜、あっ痛いっ」
コンドルに頭をつつかれた。
Siriいわく私のク〜〜は博多華丸だと評価された。
なんかくやしい。
しばらく真似してはつつかれるという事を繰り返し、
「この先すこしコンドル」
コンドルが喋っていることが分かった。
しかも交通情報を教えてくれたではないか。
「ク〜〜〜〜」
お礼を言うつもりで言ってみたら、その気持ちが伝わったらしく、
「ムムッ」
J・カビラ、いや、コンドルがまた何かを教えてくれるようだ。
「右手、スヌープドッグ」
言われるまま右手側の車道を見てみると、
本物かどうかは定かではないが、なんだか嬉しかった。
「もうすぐ、目的地周辺デス」
辺りはネオンでチカチカと光り輝き、
いろんな情報を教えてくれたコンドルとお別れをして、
【モーテル ONIGASHIMA】
日本語が喋れない日系アメリカ人が営むこのモーテル。
トラックを運転してくれたSiriとも、
「ナンカヨー、サミシイナー。オマエヨー、サイショハ、
デモイツノマニカ、
ちょっと口の悪いSiriは名残惜しそうに語り出した。
そういえば、彼?に名前はあるのだろうか。
温かみのある人情深い君の名は…?
「オレ?オレハSiriカラウマレタSiriタローダヨ」
思わずドーンブラコーッとずっこけた。
これはとある印刷会社で働く、紙をこよなく愛する人が、
紙の特徴を伝えたいという想いから始まった、紙を擬人化したショートストーリーである。
「紙女」
第一回 マット紙のような人
第二回 光沢紙のような人
第三回 耐水紙のような人?
第四回 メッシュのような人
第五回 合成紙糊あり・なしのような人
第六回 ターポリンのような人?
第七回 パワー合成紙のような人