2017.12.31社員ブログ

第八回 電飾フィルムのような人

 

「ふぅ。」

今日は残業だったから、いつもより遅い時間のバスだ。

時刻表を確認して、誰もいないバス停のベンチにどかっと座った。

年末という事もあって、人の気配がなく、しんと静まり返った街並みをぼーっと眺めていると、

突然、

「デンデンデーン デデデン デデデン デーンデーンデン デデデン デデデン」

どこからか、ハスキーボイスなダースベイダーのテーマ曲が聞こえてきた。

でも、辺りを見回しても、私しかいない。

「ヘイ、ユー、ヘーイ」

カタコトの日本語で誰かに呼ばれているけど、どこから、誰に呼ばれているのか、全く分からない。

すごく怖い・・・

「ルックアットミ~」

恐る恐る、声が言う方を見てみると、バス停に備え付けてある、電飾看板しかない。

もとい、明るく光るデンゼルワシントンしかいない。

「ナイスチューミーチュー」

・・・しゃべっている。

電気ブランの広告が、デンゼルが、しゃべっている。

これは最新の技術かな?

それとも、私が疲れているのかな?

「ヘイユー、オデン、カッテキテヨ」

「は?」

「ドンチューノージャパニーズ・オデン?」

「知ってます、けど、ここら辺に、おでん、ないですよ」

「ナーンデーンヤネーン!スグソコニ、コンビニアルヤーン!」

なぜ知っているのか。

渋々、私は彼のリクエスト通り、味しみ大根を買ってきてあげた。

というかこの人、食べれるのか?

「ねえ、あなた、看板だよね?おでん、食べれないよね?」

デンゼルは暫くきょとんとした後、顔をわなわなと震わせ、ぱっちりした目をさらに大きくかっぴらいて叫んだ。

「オーマイ、ゴーッシュ」

そして、頬を赤らめながら、恥ずかしそうにこう言った。

「デンデンシラナカッタヨ~」

行き場をなくした味しみ大根を、彼の分まで味わおう。

だしが染みたほくほくの大根を一口噛むと、じんわりとうまみが口の中に広がった。

「ア~、オデ~ン、タベレナ~イ、ショック~」
「オデ~ン、ショック~」
「デ~ン、ショック~」
「デンショ~ック」

はっ

寝ていた。

あんな変な夢なんか見ちゃうほど、私ってばやっぱり疲れてたんだ。

ふと、バス停の電飾看板を見てみると、電気ブランを持ったデンゼルワシントンが、

にっこりと私に笑いかけている。ように見えた。

 

これはとある印刷会社で働く、紙をこよなく愛する人が、

紙の特徴を伝えたいという想いから始まった、紙を擬人化したショートストーリーである。

 

「紙女」

第一回 マット紙のような人

第二回 光沢紙のような人

第三回 耐水紙のような人?

第四回 メッシュのような人

第五回 合成紙糊あり・なしのような人

第六回 ターポリンのような人?

第七回 パワー合成紙のような人

第八回 電飾フィルムのような人